王子様なんて (ページ38)

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A達が帰るとき、
いつもミンジちゃんはヒョンと2人の世界になる。

そのタイミングで、デートに誘おうって頭で何回もシュミレーションする。

A達が席から立つ。
ゆっくりとカウンターの方に近づいてくる。

映画観に行かない？って、それだけだ。
なのに、Aを目の前にすると、
何度も頭でシュミレーションしてたはずが、全部真っ白になる。

「……グク？？」

『……あぁ、っ、もう帰んの？』

「うん、もうすぐ休憩終わっちゃうから。」

『「……あのさ、」』

意を決して口を開くと、見事にAと声が被る。

「あ、ごめんなに？？先に言って？」

『…いいよ、Aの話からで。何言おうとした？」

そう言うと、Aは一瞬目を泳がせたが、
何か決心したかのように、小さく息を吐いて、俺を見上げる。

「……日曜日、もし、もし空いてたらでいいんだけど、
一緒に映画観に行かないかなって、チケット2人分買ったのにミンジが行けなくなっちゃったみたいで、」

……神様。もし貴方がいるのなら、俺は貴方に一生仕えます。
いや、仕えさせてください。