43 ページ43
2人とも最低限の支度を整えて外に出る。
まだ完全な夜明け前。
今日の曇り空のこの時間はいつもなら余計に不安を煽る色に世界を塗り潰していた。
辺りは不気味なくらい静かで、カササギの声どころか気配すらない。
電線が風で揺れる事もない、四六時中よく耳にするあらゆるサイレンの音もしない。
「ちゃんと掴まってね」
バイクに跨った私にジョングクが言う。
「さっき寝起きで俺にしたみたいに強くね」
「あれは、寝ぼけてたってさっきも言ったじゃん…」
掘り返したジョングクはただ楽しそうに笑って、ヘルメットの中で密かに顔を熱くしてるのは私だけ。
ジョングクにも私の気まずい表情は見えているだろうけど、赤くなってるかどうかまでは分からなかったらしい。
でもこのまま遠慮してジョングクに掴まらないなんて事はするつもりはなくて。
「
(出発〜)
実際、さっき寝ぼけた時の様にギュッと力を込めてしがみ付いたらバイクが動き出して。
あっという間に私はまた風になった。
嫌な記憶は何もかもこの少し冷たい風の中に消えて、ジョングクとのこの時間にむしろ没頭している。
車の修理屋の看板はやたら派手だし、ジョングクの行ったファーストフード店は赤と黄色のマークだし、立ち並ぶビルの窓は青ともグレーとも言い難い色だ。
それにジョングクの髪は黒で、私の手は少し黄色味の強い肌色。
私とジョングクの2人の世界はこんなにも他のどの時間より色鮮やかで、鮮明で、広くて、美しい。
ずっとこのままでいられたらいいのに。
叶わないと分かっていても、願う事は自由だ。
口にはせずともそう思いながらジョングクの身体を強く掴んで離さなかった。
暫く走ってバイクのエンジンが切れた時。
惜しい気持ちと爽快感が残った。
でも惜しい気持ちは10%もなくて爽快感の方が圧倒的な割合を占めていた。
ヘルメットを脱いだジョングクは頭を振って髪をくしゃくしゃと整えた。
「少し歩いてカフェ入ろ」
その言葉と一緒に自然と差し出された大きな右手に、握る事を躊躇う事など出来なかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 558人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かむ(プロフ) - 305さん» ありがとうございます！メッセージさせて頂きますので生まれ年を明記の上返信して頂ければパスワードお送りしますね😌 (5月5日 7時) (
レス) id: 03d417d136 (このIDを非表示/違反報告)
305(プロフ) - 初めまして😌小説を読ませて頂き、いろいろな作品をもっと読みたいと思い、メッセージをお願いしたいと思いますが大丈夫でしょうか💦よろしくお願いします🙇♀️ (5月5日 2時) (レス) id: f97ee42b4a (このIDを非表示/違反報告)
かむ(プロフ) - s7vfntpbswさん» ありがとうございます😌先にメッセージお送りしますね！ (4月24日 21時) (レス) id: 03d417d136 (このIDを非表示/違反報告)
s7vfntpbsw(プロフ) - パスワード知りたいのでメッセージお願いしたいです！ (4月24日 21時) (レス) id: 23dc74d0b2 (このIDを非表示/違反報告)
かむ(プロフ) - hima1010さん» ありがとうございます！こちらからメッセージ送りますね！ (4月23日 12時) (レス) id: 03d417d136 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かむ
| 作成日時：2024年4月15日 20時
