2013 Seokjin side 2 ページ1
彼女に初めて会った次の日。
練習室には俺とジミンがいて。
ペットボトルを傾け、汗で出ていった水分を体に補給しながら、いつ見ても惚れ惚れするジミンのダンスに目を向ける。
が、
何かおかしい。
「ジミナ」
声を掛けるとハッとしたように俺を見る。
その姿はまるで、隠した悪戯事が見つかった子供のようで。
「なんですか？」
柔らかく応えるけど、その目は笑っていない。
「ヒョンに隠し通せると思ってる？」
“え”って声を漏らして明らかに動揺して泳ぐ目。
その様子を黙ってじっと見ていれば、ため息をついて。
観念する。
「やっぱり…、右足を庇ってるってバレちゃいますか？」
「やっぱ変だったんだ。鎌掛けてみるもんだな」
騙されたってショックを受けた顔してから肩を落とす。
それから拗ねたように俺に抗議する。
「ヒョン酷い。僕が白状するように仕向けたんですか？」
「そういう踊り方なのかなーともチラッと思ったからさ」
口を尖らせるジミンを“まあまあ”と宥めて床に座らせ、足先と脛を掴んでゆっくり回していくと僅かに顔を顰める箇所があった。
「今から診てもらいに行こう」
「ダメですよ。こんな時期に休んでる暇なんてないです」
ジミンの気持ちは痛いほど分かる。
昨日までの俺がそうだったから。
あのままだったら俺も多分、そう言ってると思う。
でも、誰かに言って貰えるだけで救われるから。
「こんな時期だから、だよ。無理して悪化したら余計悔やむ事になるよ？少しは休んでもいいんだよ」
「…ヒョン」
申し訳ないって顔してるけど、誰にも謝る必要なんてないんだ。
「わかりました。でも病院へは一人で行けます。だからヒョンは練習続…」
「ヤぁー、ジミナ。
ヒョンの立派な肩は何の為にあると思ってるの？
こんな時くらいしか出番がないんだから使わせてよ。
じゃなきゃ、またジョングガにいじられるだろ？」
そう力説したら、落ち込んだような顔をぽかんとさせた後、少し笑顔になってくれた。
「それじゃ仕方ないですね。肩を借りてあげます」
それだけでいつも邪魔扱いされる肩の利用価値を見出せたから満足。
でも。
彼女の顔が浮かんで。
「荷物纏めながらちょっと待ってて」
「はい」
大学のノートに急いで書いた連絡先。
書いたって連絡をくれるかは分からないし、このまま会えないかもしれない。
神様とかあやふやなものに頼むのは好きじゃない。
けど、何かに祈るような思いでノートを引き千切った。
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作者名：lia | 作成日時：2024年4月15日 18時
