程遠い再会 ページ3
「お前達、今ちょっといいか？昨日話した新しいマネージャーを連れて来た」
マネヒョンに“君も入って”と促されて、
『はい』
緊張したように控え室に現れた人。
「そんな改らなくていいから」
『流石に緊張しますよ…』
マネヒョンと談笑する姿。
あの時、眼鏡は掛けていたけど、その声とか、笑い方とか、全部があの時のままで ───。
直ぐに彼女だと分かった。
やっとその姿を確認出来て、触れられる距離にいる。
なのに、夢見ていた再会とは程遠くて。
『今回、社内人事異動で新しくマネージャーをさせて頂く事になりましたAです。
よろしくお願いします』
A？
自分の中に残ってる名前とは違う物で。
しかも事務所内なんてこんな近い所にいて。
聞いていた事全てが嘘だったと気付く。
「僕、キムテヒョン！あ、知ってるか。仲良くしよぉねっ」
『…はいっ』
握手したその手を側から見ても痛そうなくらい振り回して、
「ほらほら〜、Aちゃんの腕とれちゃうよー、そこまで！」
直ぐにホビに止められてる。
俺と目が合うと、彼女は他人行儀な会釈をした。
俺の事なんて知らないとでもいうような態度と、また会えた事がこんなにも嬉しいって、俺だけがそう感じてるんだと思ったら……。
めちゃくちゃ心が抉られた。
それとも彼女にとったら些細な事過ぎて、すっかり忘れてしまったのか。
どっちにしたって、
こっちは簡単に忘れてしまえるような思いじゃないのに。
きっと、この時の俺は格好悪くも、すっかり拗ねてしまったんだ。
だから、
嘘をつかせてしまった事や、
逃げるように階段を駆け下りていった彼女の気持ちに思いを馳せて、
彼女にとったら、嫌な出来事を掘り返す事になるのか？って。
だったら…。
このまま初対面を貫くのがいいのかも知れないな。
元気にしてる姿を見れただけで、良かったじゃないか。
そんな風に自分の気持ちを誤魔化して。
「キムソクジンです、よろしくお願いします。
“Aさん”」
敢えて距離をとるような呼び方で、完璧な笑顔を貼り付けた。
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作者名：lia | 作成日時：2024年4月15日 18時
