お誘い Seokjin side ページ4
Aさんがマネージャーになってから一ヶ月。
仕事終わりの車内で、翌日の出勤が午後からだからと、テヒョンが彼女を宿舎に誘っていた。
「ねぇー、今日こそは絶対開くよ？珍しくこんなに早く帰れるんだし」
『一度事務所に帰って報告書を書かないと』
もっと仲良くなりたいと“歓迎会”と称して何度か声を掛けていたのは知っていたが、いつも答えはNOだった。
「そんなの明日でいいじゃん。何度も断られて、僕の心のガラスが引っ掻かれたみたいにキィーキィー嫌な音立ててるよ？」
「それ多分だけど、ガラスのハートが傷ついた的な事が言いたいの？」
ジミンのツッコミに“それ！”と返すテヒョンは、まだ諦めない。
「で？僕らと報告書、どっちが大事なの？」
「ヒョン、“面倒くさい彼女”みたいになってますよ。いい加減諦めたらどうですか？」
「…こういう事言う子の気持ち、分かったかも」
無表情で制止するジョングクは、Aさんが来るのを拒んでいるみたいだ。
いまだ警戒心がとれないんだろう。
まだ慣れないマネージャー業務を走り回って懸命に頑張っているのは、ジョングクも分かってると思うんだけど。
信頼関係がないと、彼女も仕事し辛いだろうし。
どうにかしないとな。
「歓迎用のバルーンも壁につけちゃったし、おいでよ」
ジミンがふわりと微笑んで首を傾げる。
『…マネージャーとしては、まだペーペーですし。ちゃんとしないと』
このあざとさにも折れないなんて、Aさんは強敵だ。
「ヒョンも何か言って下さいよ」
「…え」
急にジミンが話を振ってきて戸惑う。
すっかり他人事で聞いてたから何も考えていなかった。
ふとAさんを見ると俺の答えを待つようにジッと見つめてる。
その表情は、緊張したように見えるけど何故だろう。
「俺達と仲良くなるのは、嫌？」
口をついて出たのは狡い言葉だった。
立場的にも“はい”とは言えないって分かるのに。
『いえっ』
慌てたように首を横に振るから、その姿にまた可愛いと感じて頬が緩む。
「じゃあ、おいで？」
『…よろこんで』
Aさんは、ついに首を縦に振った。
その様子を見ていたテヒョンは顎に指を添え、
「んんー…？」
と眉を顰めながら首を捻っていた。
24.4.15
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作者名：lia | 作成日時：2024年4月15日 18時
